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全経簿記上級(工業簿記・原価計算)過去問分析

配点・内容について
工業簿記(100点)

工業簿記は、工程別総合原価計算が多く出題されています。ただし、他の論点を組み合わせた総合的な問題が多いため、問題の解き方を丸暗記していても解答できません。項目同士の繋がりを意識して過去問題で演習して下さい。

なお、全経上級の問題は、学習に最適な問題が多く、上手に活用すれば理解度アップに繋がります。また、仕訳や勘定記入など、製造原価の計算そのものよりも、計算した数値と会計帳簿との繋がりを重視した出題がなされるのも特徴です。

原価計算(100点)

原価計算では、特に長期意思決定が多く出題されています。また、日商1級では出題実績の少ない戦略的原価計算(活動基準原価計算、品質原価計算、ライフサイクル・コスティングなど)の出題が近年、多くなってきました。

解答数値の計算自体は難しくないものの、細かい管理会計の知識を問うことが多いことが特徴です。

出題傾向と合格率
試験回 工業簿記 原価計算 合格率 個別総評へ
第187回 ①個別原価計算×費目別計算
②標準原価計算
①長期意思決定
②短期意思決定
総評
第185回 ①個別原価計算×費目別計算
②等級別総合原価計算×連産品
①短期意思決定
②品質原価計算
18.8% 総評
第183回 ①工程別総合原価計算×本社工場会計 ①長期意思決定
②事業部の業績評価
17.8% 総評
第181回 ①工程別総合原価計算
②部門別計算(理論)
①短期意思決定×事業部の業績測定
②CVP分析×予算実績差異分析
18.0% 総評
第179回 ①個別原価計算×部門別計算 ①直接原価計算×標準原価計算×短期意思決定
②原価企画
21.4% 総評
第177回 ①工程別総合原価計算×標準原価計算×直接原価計算 ①長期意思決定
②長期意思決定
16.3% 総評
第175回 ①工程別総合原価計算×部門別計算×組別総合原価計算 ①CVP分析×短期意思決定
②(理論)
20.5% 総評
第173回 ①標準原価計算×原価差異の会計処理
②標準原価計算
③費目別計算(理論)
①事業部の業績測定×短期意思決定
②LCC
14.0% 総評
第171回 ①個別原価計算×部門別計算×本社工場会計 ①長期意思決定
②原価企画
③品質原価計算
16.1% 総評
第170回 ①工程別総合原価計算×標準原価計算 ①活動基準原価計算
②CVP分析
③短期意思決定
16.4% 総評
第168回 ①部門別計算×個別原価計算 ①活動基準原価計算×CVP分析 17.4% 総評
※理論問題のみの場合、「(理論)」と示しています。
個別総評
◆工業簿記
問題1
費目別計算を中心とした個別原価計算の問題です。内部材料副費は予定額を用いており、労務費では定時間外割増賃金に関する論点(理論を含む)が出題されるなど、簡単ではありませんが、難しすぎるほどの問題でもなかったかと思います。ただ、補修によって修復可能な仕損には評価額が存在しない点に注意して下さい。
問題2
標準原価計算に関する小問題で、価格差異と数量差異の計算は確実に解答していただきたいところです。混合差異(価格差異と数量差異の両方の影響を受ける差異)を価格差異に含める理由については、173回の問題にも類題があり、きちんと復習できていたかが問われています。
◆原価計算
問題1
新規設備への取替投資の意思決定です。計算問題は引っかけもなく、ごく基本的な内容でした。学習していれば十分対応可能だったと思います。なお、内部利益率法と正味現在価値法の優劣を問うた理論問題がありましたが、これは解答できなくても問題はないと思います。
問題2
前回に続き、短期意思決定の問題です。基本的には1機械作業時間当たりの貢献利益を計算して製品の優劣を計算し、最も有利なものから順に販売数量を決定していく問題でした。最後の問5のみ、製品1個当たりの貢献利益が高い順に販売数量を決定することに注意できれば、完答も難しくはない問題だったと思います。
◆工業簿記
問題1
費目別計算を中心とした問題です。通常は資料として与えられる基準操業度を自ら計算し、製造間接費予定配賦率を求める過程がもっとも難しいかと思います。公式法変動予算による製造間接費の予定配賦率は、「変動費率」+「固定費率」であることを再確認しましょう。
※ 第179回でも指摘しておりますが、厳密には評価額と売却収入は異なるものです。さらに、本問では「~売却することができた」という文章から、実際売却額が与えられていることになりますが、原価計算基準には、実際額ではなく見積額を控除する旨の記述があるため、別解として控除しないケースを示しています。詳しくは解説をご覧ください。
問題2
等級別総合原価計算(組別総合原価計算に近い方法)によって等級製品X、Y、Zの製造原価を計算した後、等級製品Zを材料として連産品P及びQの製造原価を計算する複合的な問題です。正常市価基準を採用しており、連産品の計算に対する基本的な理解が求められています。
◆原価計算
問題1
設備Aを利用して製品Xを製造している状況で、新たに類似製品X-2を製造した場合の最適セールス・ミックスを計算する問題です。リニア・プログラミング手法を用いて計算する必要があるのですが、計算上生じた端数をどうするかの指示が曖昧であるため、考え方によっては解答が分かれます。解説で詳細を確認してください。
問題2
品質原価計算に関する問題です。過去にも多数の出題実績があり、回を追うごとに難易度が高くなってきています。ただし、基本的なPAF法の分類の方法と意味を理解していれば十分だと思われるため、問4と問5については解けなくても問題ないでしょう。ただし、実務では問4と問5こそ重要な論点であるため、解き終わった後のフォローを怠らないようにして下さい。
◆工業簿記
問題1
本社工場会計をベースとした、工程別総合原価計算に関する問題です。前回同様、生産データの単位が“kg”であるため、第2工程の生産データを、①第1工程完了品Xと②追加投入材料とに分ける必要がありました。
さらに、連産品や副産物、月次損益振替の処理なども問われているため、解き方を覚えているだけの勉強をされていた方にとっては、かなり難易度が高い問題だったかと思います。
◆原価計算
問題1
設備投資の意思決定に関する問題です。基本的な計算問題であったため、ケアレス・ミスに注意して確実に解答していただきたい問題です。ただし、問3の平均投資額を用いる会計的利益率法に関しては、市販のテキスト等にあまり載っていない論点ですので、解説で理解を深めて下さい。
問題2
事業部の業績測定の計算及び理論問題です。事業部自体の評価には追跡可能性(どれだけ事業部ごとの損益を正確に割り当てるか)が重視され、事業部長の業績評価には管理可能性(どれだけ事業部長が管理できる損益を正確に計算するか)が重視されます。この基本的な考え方を理解せず、解き方だけ覚えようとしていた受験生にとっては、やや難しい問題だったかと思います。
◆工業簿記
問題1
工程別総合原価計算に関する問題です。総合原価計算の問題の多くは、生産データの単位が“個”であり、その場合は生産データの月初・月末数量をボックス上で調整して計算することができます。しかし、本問は単位が“kg”であるため、第2工程の生産データを、①第1工程完了品Xと②追加投入原料Bとに分離させる必要があります。
パターン的に総合原価計算の解き方を覚えていた受験生にとっては、かなり難しい内容に感じると思います。基本的な事項から、しっかり理解を積み上げるような学習を心がけてください。
◆原価計算
問題1
事業部の業績測定に関する問題です。事業部がそれぞれ別の製品を販売しており、事業部間での内部振替もあるという設定で、内部振替価格の決定を中心とした問になっています。未学習の状態でもある程度は解ける問題ですが、理解に時間がかかるため、時間配分を考慮して迅速な計算を行う必要があります。
問題2
直接原価計算方式の損益計算書を作成し、さらに損益分岐点分析・安全余裕率・経営レバレッジ係数の計算を行い、売上高差異(項目別分析)を行うという複合的な問題です。ただし、計算自体の難易度はかなり低いため、完答が望まれます。
◆工業簿記
問題1
部門別個別原価計算に関する問題です。理論問題は難易度が高いものですが、計算はごく基本的な内容が問われています。
※ 資料4の製造指図書番号#2、#3からは仕損、作業屑の実際売却収入が控除されており、解答用紙にも当該箇所の記入欄があるため、出題者の意図を汲み「売却収入」=「評価額」として解答しておりますが、厳密には評価額と売却収入は異なるものです。さらに、原価計算基準では見積額を控除する旨の記述があるため、本問の場合、必ずしも控除する必要はないとも考えられます。
◆原価計算
問題1
直接標準原価計算をベースにした短期意思決定の問題です。減損が存在し、減損前・減損後の数量を意識しながら差額原価を計算しなければならないため、過去問題の中でも、難易度が格段に高い問題です。制度会計、意思決定会計の基本をしっかり理解してから、腕試しとしてチャレンジすると効果的な問題だと思われます。
問題2
原価企画に関する問題です。問1の理論問題は、未学習の内容が多く、完答は難しいかと思われます。ただし、どれも基本的で重要な理論であるため、フォローを怠らないようにして下さい。問2の計算問題は許容原価・成行原価・原価改善目標の関係を適切に理解できていれば容易に解答できると思われます。また今後、原価企画・原価維持・原価改善に関する問題が増加してくると思われるので、しっかり理解しておくようにして下さい。
◆工業簿記
問題1
工程別直接標準原価計算に関する問題です。特に直接原価計算に重点を置いた問題になっており、問8では固定費調整の計算が出題されています。近年の問題で固定費調整が出題されている問題は本問しかないため、学習ツールとしては有効だと思われます。ただし、難易度は高いため、基本をしっかり理解した上で解くと効果的でしょう。
◆原価計算
問題1
長期意思決定に関する問題です。特に、取替投資についての理解を問うています。基本的な計算を、段階を踏んで設問にしてあるため、比較的解きやすい問題です。本問を難しいと感じる場合、基礎の理解が不足していると思われるため、基礎問題をしっかり理解してから解くことをおすすめします。
問題2
問題1が正味現在価値法によって取替投資の意思決定を問うているため、問題2で正味現在価値法以外の計算方法を問うています。計算自体はかなり基本的なものですので、完答することが望ましいです。問5の理論についても、自己資本と他人資本の時価を重み付けに使用して自己資本コストと他人資本コストの加重平均値を計算していることを理解しながら普段の計算をしていれば、模範解答通りではなくても、解答できる問であったかと思います。
◆工業簿記
問題1
組別工程別総合原価計算に関する問題です。工程費の計算に補助部門費の配賦計算が必要になるため、部門別計算の理解も必要な問題構成になっています。
組別総合原価計算を前提とし、製品X及び製品Yを製造していますが、計算量を考慮して製品Yの製造原価は計算する必要がないため、やや難易度は低い問題です。また、各工程で生じる仕損について、度外視法・非度外視法の両面から計算が問われているため、総合原価計算に関する確認問題として最適です。
◆原価計算
問題1
CVP分析及び最適セールス・ミックスの決定に関する問題です。CVP分析は、基本的な問題ですので、完答が望まれます。最適セールス・ミックスの決定は、リニア・プログラミングの手法を用いて計算すればよいのですが、連立方程式によって求めた部分が解にはならないため、注意する必要があります。セールス・ミックスの問題が出されたら連立方程式を解けばいいと思っている受験生が多いのですが、実際は、考えられる複数の組み合わせの営業利益を比較して決定するのであって、連立方程式で求められる解は、そのうち1つの組み合わせに過ぎないのです。近年は、基礎の理解が求められる出題が続いていますので、単に解き方を覚える解法で学習を済ませないようにして下さい。
問題2
原価企画、経営レバレッジ係数、予算実績差異分析、加重平均資本コスト率、差額原価収益分析、源流管理、バックフラッシュ・コスティング、活動基準原価計算に関する理論問題です。多様な分野からの出題は、幅広い理解を問われています。このような問題は、理解できていなければ間違い箇所を発見できないので、普段の学習から理解することを心掛けるようにしてください。
◆工業簿記
問題1
標準原価計算を前提に差異分析を行い、さらに原価差異の会計処理(追加配賦)を行う問題で、追加配賦以外の難易度は高くありません。なお、追加配賦は、期首棚卸資産を売上数量から控除するか否かによって解答が異なってきますが、当校では期首棚卸資産を売上数量から控除する必要はないと考えておりますので、他の専門学校等の解答と異なる部分があります。詳しくは解説をご参照ください。
問題2
作業区分とは、一つの工程に存在する複数の作業ごとに原価計算を行う計算形態をいいます。本問の場合、月初・月末仕掛品が存在しないため計算自体は難しくありません。ただし、月初・月末仕掛品が存在する場合の計算について一度演習されることをお勧めします。
問題3
材料費差異についての理論です。価格差異と数量差異とが混ざり合う、「混合差異」を中心に問が展開されています。また、受入価格差異の調整計算も行う必要があるため、受入価格差異調整後の期末材料棚卸高の金額は何になるかをしっかり考えて下さい。
◆原価計算
問題1
事業部の業績評価に関する問です。内部振替取引に加え、減損が生じているなど、短期意思決定を行うにおいて難しい要素が複数組み込まれています。各事業部がどのような製品をどれだけ販売しているのかをイメージしながら問題を解き進める必要があります。
問題2
ライフサイクル・コスティングに関する総合的な問題です。基礎的な理解ができる最適な問題だと思います。源流管理とライフサイクル・コスティングの関係をしっかり理解し、問1~問4のすべてを繋げられるよう、学習すると効果的です。
◆工業簿記
問題1
本社工場会計をベースとした、部門別個別原価計算の問題です。分割納入制や月末仕掛品原価の計算など、難易度が通常の個別原価計算よりは高くなっています。
また、本社工場間の取引に関する仕訳や財務諸表の金額などを問うているため、本社工場会計に関する理解が乏しいと、解答するのが難しかったのではないでしょうか。
本社工場会計の原理は、本支店会計と同じです。帳簿間の金額の移動を意識して、確実な理解を身につけましょう。
◆原価計算
問題1
設備投資の意思決定に関する問題です。法人税を考慮する場合と考慮しない場合の計算が問われています。問1から問6までは基本的な内容であるため、完答が望ましいです。ただし、問7については将来価値による投資案の評価が問われており、ほとんどの試験対策用テキストには記載されていない内容ですので、解けなくても問題ないと思われます。
問題2
原価企画に関する問題です。許容原価・成行原価を適切に理解し、折衷法による目標原価の設定方法を適切に理解できていれば容易に解答できる基本的な問題です。
問題3
品質原価計算に関する問題です。基本的なPAF法の分類の方法と意味を理解していれば十分解答できる問題です。本問は、項目名から分類を判断できないものはありませんが、過去問題には判断に迷うものも出題されています。再度、確認しておいてください。
◆工業簿記
問題1
減損が生じている場合の標準原価計算に関する問題です。計算は基本的なものですので、基本を理解されていた受験生は難しくなかったのではないでしょうか。ただし、以下の点に出題不備が見られます。
① 月初在庫量の単価が与なく、材料勘定の作成(問2)ができません。
② 「材料『消費』価格差異」と「材料数量差異」で統一されていない。
なお、減損が生じている場合は減損を考慮した原価カードに生産数量を合わせなければならないため、減損がない第1工程と、減損がある第2工程とで、生産データの数量にずれが生じています。この点は、出題ミスではありませんので、解説で確認されてください。
◆原価計算
問題1
活動基準原価計算に関する問題です。問1では理論、問2では計算が出題され、一連の流れを確認できる良い問題だと思います。
問題2
CVP分析に関する問題です。資料1の損益計算書に資料2の条件を加味して損益計算書を作成すれば、解答は難しくありません。ただし、経営レバレッジ係数に関する適切な理解が求められていますので、「貢献利益÷営業利益」の計算式だけ覚えていた受験生は、不況抵抗力が高まったか弱まったか判断できなかったのではないでしょうか。
問題3
基本的な最適セールス・ミックスの計算問題です。リニア・プログラミング手法を用いて計算する必要があります。
◆工業簿記
問題1
部門別個別原価計算に関する問題です。内容は基本的で、部門別計算の一連の流れを確認できる良い問題だと思います。ただし、問7は直接配賦法と相互配賦法(連立方程式法)の金額の差を問う珍しい形式の問題ですので、落ち着いて適切な計算を心がけてください。
◆原価計算
問題1
活動基準原価計算をベースとした、短期意思決定等の問題です。「『活動1単位の貢献利益』に基づいた適切な意思決定をすべき」という結論で構成されたストーリーを、問1~問14にわたり展開されている応用的な複合問題ですので、計算だけ覚えるような学習をされていた受験生にとっては、かなりの難問だったのではないでしょうか。
このような出題は十分に考えられますが、まったく同じ問題を予想することは難しく、計算方法を覚えても対応できないことが多いです。考え方の核を押さえ、今までの個別の計算を応用しながら解答していく技術が求められます。